脊柱側弯症は一般的には西洋医学でも各種手技療法でも治ることはなく、せいぜい現状を維持することしか出来ないと言われています。(この手技療法の中には残念ながら現代のオステオパシーも含まれますが、創始者のDr.スティルほか初期のオステオパス達は治していたと思われます。)
そして病院では、ある程度まで側弯が悪化すると背骨を金属で固定する手術を勧められてしまいます。
参考までに、現代のオステオパシーの教科書的な存在であるクチェラマニュアルから脊柱側弯症の治療目標の部分を抜粋します。
「臨床におけるオステオパシーの原則」W・クチェラ、M・クチェラ著脊柱側弯症治療目標:
治療の目標は反射脊柱の柔軟性獲得とバランスの改善、さらに何が改善できるかを判断して、第1の病因を矯正、少なくとも側弯症の進行を防止し患者の機能と生命を危険にさらすことなく、できるだけ手術による固定術を見合わせること。
オステオパシー手技は側弯症患者の管理に一定の役割を果たす。
側弯症患者は進行を防ぎ、弯曲の度合いを減らす治療法によってもたらされた新しい姿勢に対して、代償能力をもつはずである。
手技は現在ある構造の機能を最大限に高めることが目的であって、本来弯曲をまっすぐにすることを目指しているのではない。
私がオステオパシーの専門学校に在学中この内容を読んだ際、最初から治療することをあきらめてしまっていることがどうしても納得いきませんでした。
けれども今なら、これまで自分なりに経験してきたことを踏まえて脊柱側弯症は改善させることが出来ると言えます。
現代のオステオパシーは、体が歪んでいても関節に動きがあればよいという考え方ですが、創始者Dr.スティルがその著書で繰り返し書いているように、本来のオステオパシーとは全身の骨格を正しい状態に戻すことが目的です。
だからこそスティルは、自分が考え出した療法の名称にオステオ(骨)パシーと名付けたのでしょう。
Dr.スティルは「骨が本来あるべき正しい位置になければ、動脈、静脈、リンパ、そして神経伝達は決して正常に機能しない。」と言っています。
しかし、現在では最初にも書いたように体が歪んでいても可動性があればよいという考え方が、世界のオステオパシーの主流となってしまいました。
しかし、私はDr.スティルの著書
「Philosophy of Osteopathy」 1899
「The Philosophy and Mechanical Principle of Osteopathy」 1902
「Osteopathy Research and Practice」 1910
の教えに沿って施術をおこなっています。
今回、健康診断で医師に軽度の側弯症と診断され病院に行ったが、特に出来ることはないと言われて当院に来た方に、写真撮影とHPへの掲載許可をいただきましたので、紹介したいと思います。
2013年1月29日(初回)
性別 女性 年齢19歳
子供の頃からクラシックバレエを習っている
主訴:
・脊柱の側弯(軽度)
・左右の肩の高さが違う
・肩甲骨の位置の非対称、ゴリゴリ音が鳴る
・首を回しにくい
・右下肢は後方に上げにくい
・左下肢は前方および外側に上げにくい
所見:
・胸鎖関節周辺の硬化
・左肩甲骨周辺の筋、筋膜の緊張
肩甲挙筋、棘上筋、棘下筋、
肩甲舌骨筋、菱形筋など
・右股関節前面の硬化
・左殿筋の緊張
・腰椎ー仙骨間の可動性低下 他
施術:
・胸鎖関節周辺
・左肩甲骨周辺
・右股関節
・腰椎ー仙骨間 他
脊柱側湾症は周囲の筋、筋膜などの緊張を取り除かずに、カイロプラクティックや一般の整体のように背骨をバキバキして可動性をつけてしまうと、さらに側湾が悪化する可能性が高くなります。
施術の際に、カイロプラクティックや一般の整体では体全体のつながりを考えずに、どうしても脊柱ばかりにアプローチしがちですが、今回は脊柱をほとんど触っていません。
それでも、1回の施術(約1時間弱)でここまで変化がありました。
胸骨周辺を緩めたことにより、両肩が開いたことにも気づいていただけるでしょうか。
写真
左:立位施術前 右:立位施術後
写真
左:座位施術前 右:座位施術後
2013年2月17日(2回目)
施術:
・左肩甲骨
・胸郭左側
・左斜角筋
・左殿筋粗面
・右上前腸骨棘 他
側弯はそれほど気にならなくなりましたが、まだ肩の高さは違います。
首から肩にかけての張りの他、全体に体のラインがすっきりしました。
写真
左:立位施術前 右:立位施術後
写真
左:座位施術前 右:座位施術後
2013年2月22日(3回目)
施術:
・左肩
・左環椎後頭関節、環軸関節
・左腰腸肋筋、胸最長筋 他
施術前後の差が、少なくなってきました。
まだ肩甲骨周辺は左右差が目立ちます。
写真
左:立位施術前 右:立位施術後
写真
左:座位施術前 右:座位施術後
2013年3月31日(4回目)
施術:
・胸郭左前面
・頸椎左
・左肩甲骨下角
・骨盤右
前回から時間がたっているため、施術前の肩の高さの左右差が目立ちます。
これはその間に結合組織内に凝集して沈着していたタンパク質が血流やリンパの流れが改善したことにより水分を含んで膨張し、筋紡錘の張力を変化させたためです。(詳しくは「体の不調の原因とは」のページを、お読み下さい。)
写真
左:立位施術前 右:立位施術後
写真
左:座位施術前 右:座位施術後
最初と最後の写真の比較(立位)
最初と最後の写真の比較(座位)
最後にオステオパシーの創始者A・T・スティルの言葉を一つ紹介したいと思います。
医師の目的は健康を見つけることである。
病気を見つけることは誰にでもできる。