前回、リンパの説明や静脈角について書きましたが、リンパの流れを良くするために、もう一つ重要なこと。
それは、呼吸です。
なぜ?と思うかもしれませんが、それはリンパ管には血液を送り出す心臓のようにポンプ作用をする臓器がないからです。(当然、心臓もリンパのながれには関与していますが、それ以上に呼吸が重要になってきます。)
また動脈は血管の筋肉も、それなりにしっかりしていて血管自体にも、ポンプ作用があります。
しかし、リンパ管の筋肉はあることはあるのですが、非常に貧弱なものです。
これは静脈にも言えることですが、下半身から上半身にリンパ液を上昇させるには呼吸の際の胸郭の動きが、重要になってくるのです。
息を吸うと胸郭は膨らみ、その際に胸郭内は陰圧になります。
この陰圧がリンパ液や静脈血を上に吸い上げるのです。
ストローでジュースを飲むのと同じ原理です。
ストローでジュースを飲むということはジュースを吸っているようで、実はストローの中の空気を吸って陰圧をつくることにより、その下の液体が大気圧によって上に押し上げられるのです。
ですから、もし胸郭の動きが悪くなるとそれだけリンパの流れや、血液の流れが悪くなってしまいます。
胸郭の動きを悪くする原因としては、内・外肋間筋、大・小胸筋、前鋸筋、腹直筋、内・外腹斜筋などなど、きりがないくらいたくさんありますが、その中でも特に重要と思われるものを2つだけ、書きたいと思います。
まず1つは横隔膜です。
下の図は横隔膜の図です。
これは呼吸をするための、最も重要な筋肉です。
横隔膜は胸郭の底の部分に床のようについていて、息を吸うときは収縮して胸郭の底面積を広げ、息を吐くときは弛緩してドーム型に盛り上がり、胸郭の底面積を小さくします。
これにより、肺に空気が出入りします。
もし横隔膜に問題が起きて、緊張しっぱなしになったりすると、呼吸は浅くなり、十分な酸素を取り入れることも、十分なリンパ循環もできなくなってしまいます。
また横隔膜は、食道、大動脈、大静脈、胸管、迷走神経など多くの重要なものが通過しており、横隔膜に問題が起きるとこれらにも問題が起きます。
筋肉で最も重要なのは横隔膜ですが、それ以外では結合組織の部分です。
結合組織と書いても、???という方も多いでしょうが、例えば、靭帯、腱、関節包、骨膜、筋肉を包む筋膜などです。
下の図を見てください。
体の前面では特に、胸骨から恥骨にかけての正中線の部分です。
図を見てもわかるようにこの部分には筋肉はなく、胸骨膜、白線など上から下まで線維組織でつながっています。
繊維組織というのは、私がいつも言っているように、タンパク質などの沈着物が溜まりやすい部分です。
この線維の中に、沈着物がたまり硬くなっていくと胸郭は自由に動けなくなり、リンパの流れにも影響します。
さらにこの部分はそれだけでなく、人の姿勢にも大きく影響します。
普段から背中を丸めた姿勢でいたり、何らかの原因でこの部分の、体液循環が悪くなると、沈着物で線維組織が硬くなり背スジを伸ばせなくなってしまいます。
ちょうど、長期間ギプスで固定した関節と同じような状態です。
ですから、背骨が丸くなっている人の場合は、背中の部分だけでなく、体の前面を見てみることも非常に重要になってきます。
次回は、リンパの流れをよくするために自分でできるストレッチについて、書きたいと思います。