今回は炎症というものについて、考えてみたいと思います。
炎症の定義を病理学的にいうと、
1、発赤
2、発熱(熱感)
3、腫脹
4、疼痛
5、機能障害
これらの5つの徴候が見られるものを炎症と呼んでいます。
炎症の機序の病理学的な説明では、一般的にヒスタミン、ブラジキニン、プロスタグランジンなどの化学伝達物質の働きで説明していますが、これらとは違う観点から、うまく炎症の経過を説明できないか考えてみました。
私なりの炎症に対する考えを書く前に参考になると思いますので、北海道の酪農家のはなしを書きたいと思います。
現在、北海道の酪農家は牛に与える牧草をロールという巨大な乾草の巻物にして貯蔵しています。
写真などでも、牧草畑にロールが点々と転がっているのを見たことがある方も多いと思います。
このロールはロールベーラーという機械で巻いていくのですが、その時に牧草の乾燥状態が不十分で水分を通常よりも多めに含み、それにプラスしてトラクターの馬力が足りなくて、しっかりと締まった硬いロールにならないと、ある問題が発生します。
それは、倉庫に積み上げておいたロールの中で発酵が起こって発熱し、自然発火して火事になってしまうことです。
実際に、北海道ではまれに牧草ロールの自然発火が原因の火事が起きます。
この自然発火が起きるには3つの条件が必要です。
1、
菌の酵素が分解する有機物がある。(牧草は有機物のかたまりですので、この条件は問題ありません。)
2、
適度な水分がある。(しっかりと乾燥させた牧草ロールでは、自然発火は起こりません。)
3、
牧草のあいだに隙間があり、空気が入り込める。(水分が少しくらい多くても、がっちりと絞められたロールには空気(酸素)が入り込む余地がないため少し発熱するだけで、酸素が無くなれば発熱は止まります。)
ですから、ラップサイレージという牧草をラップでぐるぐる巻きにしたものは、水分が多いにもかかわらず酸素の供給が無いため、ラップに穴が開いていない限り、発火することはありません。
一応、説明しておきますがラップサイレージは牧草をある程度水分の多い状態でラップで包み、嫌気的に乳酸発酵させることにより、栄養価を高めることと、貯蔵性を両立させたものです。
牧場に立っているサイロはこのサイレージを作るためのもので、ラップサイレージは、その作業をサイロを使わずにラップに包んで行うものです。
私は、ひとの体の中でもこれと同じようなことが起こっているのではないかと考えています。
それでは、次回そのことについて書きたいと思います。